2024年度の不動産取得税が2兆3,000億円に達し、17年ぶりの高水準を記録しました。
固定資産税なども含めた不動産関連税収全体が大幅に増加しており、これには地価上昇と不動産取引の活発化が大きく関係しています。
地価上昇の背景
まず、地価が上昇している主な要因として、以下のような動きが挙げられます:
- 資産防衛・相続対策としての不動産購入の活発化
- 外国人投資家の流入(特に円安の影響で日本の不動産が割安に)
- 国内の低金利政策が続いたことによる資金の不動産市場への流入
こうした動きにより、住宅地・商業地ともに地価が底堅く推移し、取引も活発になったことで、取得税や固定資産税の課税対象評価額が上昇しました。
不動産税収が増加する構造
不動産税収には主に以下の税目があります:
- 不動産取得税:土地や建物を取得した際に課される
- 固定資産税:毎年1月1日時点での所有者に課される
- 都市計画税:市街化区域内の不動産に課される
- 償却資産税:法人が保有する設備等に課される
- 登録免許税:不動産登記をする時に課される
- 印紙税:契約書や領収書等の課税文書に対して課される
2024年度はこれらの税収すべてが増加傾向にあり、特に不動産取得税の伸びが顕著でした。
投資家・保有者にとっての税務リスク
この地価上昇と税収増加の流れは、不動産を保有・投資する側にとっても少なからず影響を与えます。
1. 固定資産税の増加
評価額が上がると、保有コストである固定資産税も増加します。キャッシュフローの圧迫に繋がるため、長期保有型の投資家は特に注意が必要です。
2. 相続税評価の上昇
地価の上昇は相続税評価額の上昇にも直結します。小規模宅地等の特例などを活用しないと、相続税額が大きくなる可能性も。事前の資産整理・生前贈与など、相続対策が急務となります。
3. 税制改正の議論
住宅ローン控除の見直し、相続税評価の再検討など、「課税の公平性」を巡って今後議論が進む可能性があります。今までの節税策が通用しなくなるリスクもあります。
これから注意すべき点・対応策
✅ 定期的な資産評価の見直し
地価の動きに敏感になり、保有資産の評価を定期的に確認することが重要です。特に不動産を複数保有している場合は、資産構成のバランス調整も検討しましょう。
✅ 法人保有の検討
個人よりも税制面で有利なケースもあるため、不動産の新規取得や相続を見据えて法人での保有を検討することも一案です。
✅ 税理士と連携した対策の強化
税負担増のリスクに備えて、税理士と相談の上で節税・資産保全のスキームを見直すことが今後の鍵となります。
まとめ
地価の上昇は不動産投資家にとって喜ばしい面もありますが、税負担の増加という見逃せない側面も孕んでいます。特に中長期的な資産形成を目的とする不動産オーナーは、税制動向にも目を配り、先手を打った対応が求められます。
「地価が上がった=儲かった」で終わらせず、「税務の落とし穴がないか?」と一歩深く考える視点が、今後ますます重要になるでしょう。
日経新聞:地下上昇、潤う不動産税収