「うちは黒字だから、融資は問題なく通るはずだ!」
そう思っていませんか?
実はこの言葉、銀行員にとってはちょっと不安を感じるフレーズでもあります。
なぜなら「黒字=安心」ではないからです。
今回は、黒字決算でも銀行融資が通らない、つまり“黒字なのに融資NG”となってしまう理由を、3つの視点から解説していきます。
① 黒字倒産予備軍?手元資金が足りない会社
まず一つ目の理由は、手元資金の不足です。
帳簿上は利益が出ている。でも、現金が全然ない。そんな会社、実は少なくありません。いわゆる「黒字倒産」です。
「売上はあるけど、資金繰りが苦しい」
──そんな声、経営者の皆さんからよく聞きます。
銀行が融資の際に見ているのは、“利益”だけではありません。
むしろ「返済原資=現金があるかどうか」が重要なんです。
金融の世界では、手元資金が「月商の3ヶ月分」あると安心と言われています。
たとえば月商500万円なら、最低1,500万円は欲しいところ。
現金の蓄えが少ないと、いざというときに
「この会社、返済できるかな?」
と判断され、融資がストップする可能性もあるのです。
② 銀行目線で見ていない決算書
2つ目の理由は、決算書の見せ方です。
黒字であっても、決算書の中身が整理されていないと「管理が甘い会社」と評価されるリスクがあります。
よくあるNG例としては、
・営業利益や経常利益が赤字で、特別利益だけで黒字にしている
・役員貸付金や仮払金が多い(資金の流れが不透明)
・減価償却が未実施、または極端に少ない
こうしたポイントを金融機関はしっかりチェックしています。
決算書は“社長の通知表”のようなもの。そして銀行にとっては“信頼できる設計図”でなければなりません。
逆に言えば、営業利益・経常利益がしっかり黒字、仮払いや役員貸付金もなく、減価償却も適切に行われていれば、それだけで銀行からの評価はグンとアップします。
また、仮払金や役員貸付金があったとしても、銀行が納得する理由がありば問題ありません。
実際にあった事例ですが、決算前に誤って取引先へ支払いをしてしまい、決算が明けてから回収していました。
このような場合、通帳を見せちゃんと回収できいることを説明できれば、銀行も納得してくれます。
③ 経営者が財務に弱く見られている
3つ目の理由は、ちょっと耳が痛いかもしれません。
それは、経営者自身が「財務を語れない」こと。
たとえば、銀行からの質問に対して、
「経理担当に聞かないと分かりません…」
という答えが返ってきたら、どうでしょう?
銀行から見れば「この社長、大丈夫かな?」と不安になりますよね。
実際に、金融機関は「数字に強い経営者」かどうかをしっかり見ています。なぜなら、経営判断=お金の判断だからです。
だからこそ、損益計算書や貸借対照表の基礎を押さえておくことは必須。
そして、銀行との面談では「今期の売上はこれくらいで、来期はこうなる見込みです。だから〇〇万円を調達したい」と自分の言葉で語れるかが大事です。
当事務所では毎月会計ソフトへ入力し、試算表を作成。そして、試算表をもとに経営者と打合せをします。
最初は数字の見方など分からなかった経営者も、毎月一緒に数字を追いかけることで理解が深まります。
数年もすれば、経営者の方から「〇〇の数字についてだけど...」、「今期の数字は〇〇になりそう」など積極的な話が出来るようになります。
どうすれば「融資されやすい会社」になれるか
黒字なのに融資が通らない──その原因の多くは、「見せ方」と「説明の仕方」にあります。
ですので、まずは以下の3つを意識してみてください。
・手元資金の見える化:月商3ヶ月分を意識した資金繰り
・銀行目線の決算書:営業利益・経常利益の黒字化、資金の透明化
・経営者自身の理解力:最低限の会計知識を身につける
そして必要であれば、会計事務所や税理士とタッグを組んで、決算書の改善や金融機関向けの資料を整えることも大切です。
まとめ「黒字=安心」ではない時代、融資の現場はこう見ている
実は今、銀行は企業の数字以上に「経営者の姿勢」や「管理体制」を重視しています。
金融検査マニュアルでも、中小企業への融資においては、決算書の数値だけでなく「経営者の資質」や「資金繰りの把握力」など、ソフト面の評価が重要とされています。
つまり、経営者自身が「数字と向き合い、資金の流れを把握している」ことが、融資の可否を大きく左右する時代になってきたのです。