融資対策

不動産会社が銀行融資で失敗する3つの典型的な落とし穴とは?

「担保はあるし、売上も立っている。不動産業なら融資なんて簡単でしょ?」

…そう思っていたのに、なぜか銀行からの返事は「今回は難しいです」。

実は、不動産業における融資審査には、独特の“見られ方”があります。しかもそれは、決算書の数字や担保価値とは別の視点だったりします。

銀行は何より「返済される見込みがあるかどうか」を重視します。そして、その答えを導き出すために見るのが、キャッシュフローと継続的な収益性です。

今回は「不動産会社が銀行融資で失敗する3つの典型的な落とし穴」について、実際の事例とともに深掘りしていきます。

本記事の内容

【落とし穴1】担保がある=安心ではない“収益性”と“返済原資”が見えていない

【落とし穴2】資金使途が曖昧。銀行は「何に使うか」を必ず確認している

【落とし穴3】業務体制が未整備。経営力・継続性への不安がある

あなたの大切な事業機会を逃さないためにも、ぜひ最後まで読んでみてください。


【落とし穴1】担保がある=安心ではない“収益性”と“返済原資”が見えていない

「土地を持ってる」「物件を担保に入れる」と言えば銀行は安心して貸してくれる。 そう思っている方も多いですが、これは大きな誤解です。

銀行が見るのは「この会社は、この融資を返せるのか?」という視点です。つまり、担保よりも優先されるのは、「返済原資」の有無です。

ここでいう返済原資とは、家賃収入・売上・営業利益など、日々の事業活動で得られる現金のこと。

たとえば、ある中堅不動産会社が、1億円の融資を申し込みました。立派な土地を所有しており、その評価額も高かったのですが、融資は否決されました。

理由は「収支計画がずさん」だったからです。売上は確かに立っていましたが、キャッシュフローの説明が弱く、支出と返済のバランスが見えなかったのです。

さらに、「今後の収益見込み」や「空室対策」についての説明も曖昧でした。銀行としては、将来的な安定性が見えなければ、いくら担保があっても貸せないのです。

このような事態を避けるためには、以下の対応が効果的です:

・実績ベースのキャッシュフローを月単位で提示

・物件の収益性(利回り・稼働率)の現状と改善計画

・借入金に対する返済余力を数値で示す

また、帳簿上の利益と現預金の残高がかけ離れている場合は、その理由(例:減価償却や役員報酬など)を明確に説明しましょう。

物件ごとのレントロールを作成し、毎月更新しておくと管理が楽になります。


【落とし穴2】資金使途が曖昧。銀行は「何に使うか」を必ず確認している

「この融資は物件購入資金です」だけで終わらせていませんか? 銀行は、具体的に「いくらを何に使うか」を把握していなければ、社内稟議を通すことができません。

実際にあった事例をご紹介します。

ある法人が、土地建物の購入とリフォーム資金として合計5,000万円の融資を希望しました。ところが、内訳を聞くと「購入2,500万円、リフォームに2,000万円、その他に500万円」とだけ記載。

銀行側は「その他とは何か?」と質問しましたが、代表者は「雑費です」と曖昧に回答。結果、信頼性を欠いたとして、審査は保留。

再提出後、明細付きの改修計画と、業者見積、工程表などを添付したことでようやく審査が進みました。

このように、資金使途は“明確に・細かく・論理的に”が鉄則です。

以下の資料を事前に整えておくと有利です:

・工事・仕入れに関する見積書(複数社比較が理想)

・支払いスケジュールと必要時期を反映した資金繰り表

・自己資金とのバランス(借入比率の根拠)

 

【落とし穴3】業務体制が未整備。経営力・継続性への不安がある

銀行が融資をする際、「この会社は5年後、10年後も続いているか?」という視点で見ています。

たとえば、

・社長が一人で営業・契約・現場管理・資金繰りまで行っている

・数値管理が担当者任せで、社長自身が把握していない

・万一社長が倒れたら会社の経営が止まってしまう

こうした状況は「属人化リスク」と呼ばれ、金融機関にとっては大きな懸念材料となります。

実際に、社長が資金繰りをすべて握っていた会社で、急病により資金の流れが不明に。これを機に、銀行は既存融資の返済条件を見直すよう要求しました。

このような事態を防ぐには:

・担当ごとの役割分担表と業務マニュアルを整備す

・定例の経営会議で経理や資金繰りの情報を共有する

・試算表や資金繰り表を毎月チェックし、銀行提出資料にも反映する

また、事業承継対策(後継者の指名や教育)が進んでいれば、銀行評価はさらに上がります。


【まとめ】銀行は「信頼できる経営者」と「見えるお金の流れ」を重視する

不動産業に限らず、銀行融資の本質は「信用」にあります。

そして、その信用をつくるのは、

・継続的なキャッシュフロー

・明確な資金使途と資金繰り計画

・安定した経営体制

これらを“見える化”して説明できるかどうかです。

「担保さえ出せば貸してもらえる」は過去の話。現代の銀行は“数字”と“人”の両方を見ています。

物件力に加え、事業全体の「筋の良さ」が伝われば、銀行も「この会社には貸したい」と思ってくれるものです。

融資における信頼づくり。まずは社内の数値と計画の整理から始めてみましょう。

次回は「金利だけで決めてない?銀行選びの意外な落とし穴」について詳しく解説していきます。

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